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自分の性別を証明するものは何か?―FTMだったかもしれないGさんの話


性同一性障害特例法が成立する以前の、20世紀の話です。しかし現在でも同じ悩みを抱えている人がたくさんいます。そんな人がこのコラムを読んで、自身について考えてくれたらと思います。


Gさんと初めて会ったのは、レズビアン女性やFTMトランスジェンダーが集まるクラブイベントでした。Gさんが酔っ払いながら自己紹介より先に言ったのは、「自分、病気で子宮と卵巣取ってるんだよね」。そのインパクトに若干引いたものの、こんな人もいるんだなと納得し、しばしば飲み会で会うようになりました。

Gさんは眼鏡をかけていて、小太りで、金髪のオールバックを刈り上げて、いつもテカテカのスーツを着ていました。ホルモン注射や乳房除去手術はしておらず、一見すると「声の高い太ったホスト」。外見だけならお笑いコンビ「サンドウィッチマン」の伊達みきおを想像して頂ければと思います。

そんなGさんの話題はいつも「今週はどんな女をナンパしたか」「何人とセックスしたか」。どんな時も女性とセックスの話しかしないGさんにゲンナリつつ、知り合いとして付き合っていたところ、ある日「恋人ができた」とMTFトランスジェンダーの女性を紹介してくれました。以下「彼女さん」と呼びます。

彼女さんは最初こそGさんが積極的に口説き落としたものの、すぐ彼女さんの方がGさんにベタ惚れし、Gさんは彼女さんに迫られる形で付き合い始めたそうです。そしてGさん、彼女さん、その他知り合いでの飲み会が何度か続いた後、その日はやって来ました。彼女さんが飲み会で、Gさんにサプライズプロポーズしたのです。

「Gくんのことが大好きです。私たちは性別こそ逆だけど、戸籍上は結婚できます。私と結婚して下さい」

すわお祝いムードに突入か?という流れの中、Gさんはと言うと、逃亡しました。返事をする前に「ちょっとトイレ」を言って席を立ち、そのまま帰って来ませんでした。

彼女さんは知り合いという知り合いに連絡してGさんの行方を探しましたが、Gさんは家にも帰らず、飲み会にも来ず、クラブイベントにも現れず、音信不通になりました。彼女さんはしばらく泣き叫んだり塞ぎ込んだりを繰り返し、半年ほど荒れていましたが、徐々に生活のリズムを取り戻して行きました。

一年以上経って、Gさんから彼女さんに手紙が届きました(メールというものがまだなかった時代です)。私はたまたまその手紙を見せてもらったのですが、長い長い謝罪の言葉の後、Gさんはこんなことを書いていました。

「病気で子宮と卵巣を取った時、自分はもう女性でなくなってしまったと思った。女性でないなら男性になるしかないと思った。男性というのはいつもスーツを着て、セックスした女の数を競うものだと思っていた。でもそれが全部間違いだったと気付いた。あなたにプロポーズされた時、『自分は女なのに、女と結婚したくない』と思ってしまった。今は子どもを望まない男性と出会って夫婦として暮らしている。あの時は本当にごめんなさい」

「子宮と卵巣がないなら女性ではない」「女性でないなら男性になるしかない」「男性ならこんな行動をするはずだ」という認識から、「自分は子宮と卵巣がない女性だ」という認識に辿り着くまで、Gさんは周囲を巻き込んで試行錯誤しました。そしてGさんのように「性器=自分の性別を証明するもの」という考え方は今でも根強くあります。人によっては「性器」ではなく「性染色体」であったり「パス度」であったり「肉体改造の度合い」であったり「性同一性障害の診断書」であったりします。

しかし何よりもまず「自分の思う自分の性別」を大切にしてほしいと思います。誰が何と言おうとあなたの性別はあなたが決めるべきですし、それは尊重されるべきです。そしてあなたが自分や他人の性別に条件を付けているなら、今一度その判断について考えてもらいたいと思います。




(サポーター)

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