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性別違和感のポイントは人それぞれ―MTFのFさんの例


「性別違和感」と呼ばれるものの正体は、例えば『トランスがわかりません!! ゆらぎのセクシュアリティ考』(ROS編著、アットワークス)の中で語られています。そしてどこにどんな違和感があって、どうやって解消したいかは、人によって様々です。

自助グループで出会ったFさんの話です。遅れてミーティングにやって来たFさんは、少し禿げ上がった頭にネクタイにスーツ姿の50代のサラリーマンかと思われる人で、第一印象は「年季の入ったFTMかな?」と思う容姿でした。しかしFさんは明るい語り口でこんな話を始めました。

「僕、こんな格好してるけど、MTFなの。もうだいぶ前に手術は終わってるんだよね。自分の体が男だっていうことがすごく嫌で、海外で男性器を取って、胸はシリコンを入れたの。Cカップだけど、ブラジャーしてても、スーツだと目立たないよね。会社では僕くらいの年齢になると、とてもMTFです、性別変えました、なんて言えないから、仕事はネクタイとスーツで行ってるけどね。全然カムアウトはしてないよ。今更失業しても困っちゃうから、それはそれで仕方ないかあって思ってるの。そう言えばこの前健康診断があって、心電図検査の時に上半身裸になったんだけど、ちらっとカルテ見たら『乳房に異常なふくらみがあり要再検査』って書かれてて、笑っちゃったよ」

Fさんにとって重要な性別違和感のポイントは「男性の体であること」でした。それが外科手術によって解消されたらある程度満足し、「女性として生活を送る」ことの比重はそれほど大きくなかったのでした。だから一人称は「僕」であり、スーツで会社に通うことも嫌悪せず、健康診断で引っ掛かっても笑って話せるくらいに、自分との折り合いを付けていました。

「トランスジェンダーは体の性と心の性が一致しない障害者だ」という主張があります。また「自分の思う性別で生活することが一番大事だ」と言う人もいます。また「体の性別も生活上の性別も戸籍の性別も一致させなければ、トランスジェンダーの生きづらさは解消できない」という意見もあります。

しかし、そういったトランスジェンダーはごく一部です。多くのトランスジェンダーは、経済的にも社会的にも身体的にも「自分はこの部分をこうすれば満足する」ポイントを見付けて、自分なりに生きやすい方法を模索しています。

「トランスジェンダーなら身体違和感があるはずだ、なければトランスジェンダーではない」「トランスジェンダーなら手術したいと思うはずだ」「トランスジェンダーなら正しい性別で生きたいと思うはずだ」といった言説は私が知る限り80年代以前からありますが、そういった大きなノイズに飲み込まれて不必要な労力を使うことなく、「どうすれば<自分にとって>一番楽か」を探して、自分なりの答えを見付け出してほしいと願っています。


(サポーター)

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