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バイセクシュアルは存在しないと言ったゲイの活動家の話


あるゲイの活動家の本に、こんな文章がありました。

「僕は本当の意味でのバイセクシュアルというのは存在しないと思っている。バイセクシュアルというのは自分のセクシュアリティを隠そうとする同性愛者の嘘だ。本当は同性愛者だけど、「異性が好きだけど、同性もイケるんだよね」と言っておけば、一般的には「悪趣味なやつ」で済まされるから」

非常に衝撃的でした。私がバイセクシュアルで、そのセクシュアリティを否定されたから、というような意味ではなく、「仮にもゲイ活動家を名乗って講演や執筆を行っている人が、他人のセクシュアリティについてはこんなにも偏見まみれなのか」という意味で、です。

一応、彼の主張は「ゲイ男性を蔑視するな」というもので、「セクシュアリティは多様である」「多様なセクシュアリティを認め合おう」というものではないので、矛盾しているわけではありません。ただ傍から見たら「その道の人がこう言っているんだから、バイセクシュアルは存在しないんだな」と思われてしまう可能性があることに、彼は無頓着でした。

私がこのゲイの活動家の本から学んだのは、「先人の言うことをよく知ろう」「その上で、先人の言うことを鵜呑みにしないようにしよう」でした。

個人のエッセイでも学術書でもネットの書き込みでも、たくさんの情報に触れているとわかってくるのが、「自分が思い付くようなことは既に誰かが言っている」です。類のない目新しい斬新なアイデアなんて、どこにでもいる凡百の人間に降ってくるものではありません。誰よりも勉強し誰よりも考え抜いた研究者が運に恵まれて新しい発見をすることが稀にある、くらいのレベルです。

例えば2016年に見たネットの広告に、「世界初! FTMによるFTMのためのナベシャツ販売!」のような文言がありました。しかし私が知る限り、2000年には「娘だった息子のために母親が作ったナベシャツを、他の当事者にもオーダーメイドで販売します」という個人サイトがありました。インターネットが普及する以前にも、おそらく口コミやミニコミ誌の読者交流欄を通して、こういったやりとりはあっただろうと想像できます。

先人が積み上げて来たものを知らなければ、性同一性障害がなぜ「障害」と名付けられたのかもわかりません。障害者運動の中では何十年にも渡って、障害の恣意性を明らかにする努力が続けられてきました。その流れに逆らって「性同一性障害」が知名度を上げてしまった理由を知らなければ、いつまでも「かわいそうな障害者」イメージから逃れることはできません。

ただし、先人の言うことをまるっきり信じてしまうことは危険です。冒頭に挙げたゲイの活動家のように、本人の無知や偏見に基づく発言もたくさんあるからです。FTMやFTXに関することなら、例えば「診断書がなければ本物のFTMではない」とか「身体違和がなければトランスジェンダーではない」とか「FTXはボーイッシュな女性を指す」とか「これが正しいセクシュアリティの図解だ」といった発言は山のようにあります。しかしそのどれを採用するかは自分自身にかかっています。

たくさん知り、その中から自分で選ぶ。その力を付けるためにたくさん知る。この繰り返しの中で、自分について自分で考える力を付けて行って欲しいと思います。




(サポーター)

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